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男性用育毛剤を科学する〜育毛剤の元祖、ミノキシジル〜

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男性型脱毛症の科学

男性型脱毛症とは

男性型脱毛症とは、いわゆるはげの代表的な原因と言えますが、はげ=男性型脱毛症とは限りません。

はげとは毛髪が抜け落ちて量が少なくなった『結果』の名称であり、毛髪の成長速度が抜け毛の速度よりも早くなって見かけ上はげとなっている場合や、毛髪の太さが細くなり、地肌が透けて見えている様な状態、そもそも毛髪の成長が止まってしまった状態など様々な要因、メカニズムにより発生します。

男性型脱毛症の他の要因としては、ストレスなどの精神的理由や、皮脂の分泌過剰、病気、薬の副作用によるもの、放射線被ばく、外傷などがあります。はげ対策を行うためには、どの様な原因により発生したはげであるのかを良く理解し、それにあった対策を選択する必要があります。

男性型脱毛症には形状によって複数のタイプに分けられますが、大きくはつむじを中心とする頭頂から発生するタイプと、生え際からつむじに向けて進行するタイプの2タイプに分ける事が出来ます。

その他のサブタイプにも分けられる事がありますが、この2タイプの複合によるバリエーションであると考える事が出来ます。このパターンに当てはまらない場合は、男性型脱毛症以外の原因を疑ってみる必要があります。

原因にマッチしない対策は、効果がないだけではなく、逆効果となって症状を悪化させる危険性もあります。またつむじや生え際にはヘアセット時などに物理的な負荷がかかる事も多く、抜け毛を誘発しやすいことにも留意しましょう。

はげの原因を調べるためには抜け毛を観察する事も有効です。人の毛髪は日に100本程度抜け落ちます。この正常な抜け毛と男性型脱毛症による抜け毛では、毛根の形状に差異が見られます。

正常な抜け毛の毛根は根本が丸みを帯びているのに対し、男性型脱毛症による抜け毛は、毛根が痩せており細くとがっている様に見えます。また、皮脂の分泌過剰によるものの場合は毛根に付着した脂肪分が白く見えます。

男性型脱毛症のメカニズム

毛髪は、ヘアサイクルと呼ばれる周期を持って絶えず変化しています。毛髪の産生の起点となっているのは毛乳頭と言う組織で、これを取り囲むように毛包が組織されています。毛包と毛乳頭の接する部分に毛母組織が存在し、毛髪の成長期には毛母細胞が増殖して毛髪を形成します。

成長期が終わると細胞の増殖・分化を制御し細胞死を促す事が知られているサイトカインの一種であるTGFβが作用して、アポトーシス(細胞の自死)が誘導されます。これにより、抜け毛が発生する退行期に、続いて毛乳頭の充電期間とも言える休止期に入ります。

男性型脱毛症を発症する場合、この毛包組織にジヒドロテストステロンが作用して、ヘアサイクルの内の成長期が短縮してしまう事が判っています。

ジヒドロテストステロンは男性ホルモンであるテストステロンから作られますが、なぜ作られるかまでは解明されていません。男性型脱毛症への対策では、このメカニズムの任意の段階に働きかけてヘアサイクルの維持、回復を目指しています。

育毛剤の有効成分、ミノキシジルとは

ミノキシジルの歴史

ミノキシジル系育毛剤の歴史は長く、1960年代にさかのぼります。当時アップジョン社(現在のファイザー製薬)が高血圧用の飲み薬として開発しました。その後育毛効果が確認され、1980年代になって脱毛症の治療薬『Rogaine』として販売されはじめました。

当初は飲み薬として販売されていましたが、副作用が発見されたため、現在は外用薬として販売されています。日本国内では1999年に大正製薬より一般用医薬品『リアップ』として販売が開始されています。

ミノキシジルの化学的特性

ミノキシジルはIUPACと言う化学物質の国際命名法に則ると、6-ピペリジン-1-イルピリミジン-2,4-ジアミン-3-オキシドという名称です。常温常圧では固体で、融点は248℃、水に溶解します。体内に取り込まれると、肝臓まで循環し、4.2時間ごとに約半分が分解されていきます。

ミノキシジルのメカニズム

ミノキシジルの効果は毛髪を産生する毛包の成長周期に影響を与える事によって発生します。完全には解明されていませんが、以下の内のいずれかの効果が影響を与えていると推測されています。

  • 血管平滑筋ATP感受性Kチャネル開口による毛組織血流改善
  • 毛乳頭細胞からの細胞成長因子の産生促進
  • ミトコンドリアATP感受性Kチャネル開口による毛母細胞アポトーシスの抑制

これは、次の様に言い換える事が出来ます。

  • 血流改善により、毛髪の成長期への移行を促進する
  • 細胞成長因子を増やして、毛髪の太さと長さを改善する
  • 毛母細胞の自死を抑制し、毛髪の寿命を延ばす

毛髪の太さは、毛髪成長サイクルの内、成長期の毛包の大きさに依存し、長さは成長期の期間の長さに依存します。男性型脱毛症では遺伝等の原因により毛髪の成長期間が短くなるため、毛包の大きさが不十分かつ、長さが短くなる事と、休止期間が長くなる事とされています。

このうち、休止期間の短縮化だけでは脱毛症の改善効果は小さく、成長期の期間延長が重要である事が分かっており、ミノキシジルはまさにこの成長期の改善を行っているのです。

ミノキシジル系育毛剤の種類

ミノキシジル系育毛剤は、国内メーカー2社から発売されており、輸入代行会社等を通じて海外製品も流通しています。

ロゲイン

販売元:マクニール

ファイザー製薬が開発した元祖ミノキシジル系育毛剤ですが、現在はジョンソンアンドジョンソンに売却されています。マクニールはジョンソンアンドジョンソンの子会社です。国内販売はされておらず、通販サイト等を利用する必要があります。国内品のリアップと比較して割安で入手出来ます。

ツゲイン

発売元:シプラ社

インドの製薬会社によるロゲインのジェネリック薬品です。こちらも通販サイト等を利用する必要があります。ジェネリック薬品は開発費などがほとんどかかっていませんので、ロゲインと比較して非常に安価に入手出来ます。また、ミノキシジル成分を10%配合したタイプもラインナップされていますが、配合量イコール効果とはならないためよく判断して選びましょう。

ポラリス

発売元:ポラリスリサーチラボラトリーズ

ミノキシジル以外の成分も配合しており、環境要因による毛髪へのストレスへの対策も考慮している事が特徴です。こちらもアメリカの販売会社であり、国内販売はされていません。

リアップ

発売元:大正製薬

国内ミノキシジル系育毛剤の草分けです。男性用、女性用、高濃度等のラインナップが揃っています。国産品は海外品と比較して割高になる傾向がありますが、製品品質の安心感と、副作用等が発生した時の対応、入手性の高さなどが評価出来るかと思います。

メディカルミノキ5

発売元:アンファー

スカルプDで有名なアンファーより発売されたミノキシジル系育毛剤です。2017年10月4日発売ですのでこれからレビュー等も見られる様になるかもしれません。

ミノキシジル系育毛剤の使い方と注意点

ミノキシジル系育毛剤の使い方

ミノキシジル系育毛剤は、内服用、外用の両方で効果がありますが、現在は外用薬のみが国内販売されています。内服用の場合は副作用の可能性が比較的高くなりますので、外用として使用しましょう。

各メーカーから発売されている育毛剤は、ミノキシジルの配合濃度を表示しているケースが多くあります。おおよそ1%~10%の範囲で配合されていますが、濃度が増えても効果は上がらないという研究報告も出されていますので、通常販売されている5%以下のものをメーカー指定の方法で定期的に使用するのが好ましいでしょう。

ミノキシジル系育毛剤の副作用

ミノキシジル系育毛剤の副作用としては以下のものが報告されています。

  • 基材成分として使用されているプロピレングリコールに対するアレルギー反応
  • 低血圧
  • 薬液の使用個所におけるニキビの発生
  • 頭痛、意識朦朧
  • 多毛症
  • 性的不能
  • 性欲減退
  • 不正脈、動悸
  • 皮膚の紅潮
  • 霞み目
  • 手、足、顔のしびれや痛み
  • 胸の痛み
  • 急速な体重増加
  • 下肢、手、足、顔のむくみ

ニキビ以外の症状は育毛剤の使いすぎの目安になるとされていますが、発症した場合はただちに医師の診断を受ける事が強く勧められています。

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